当時ワコールが開催していた下着ショウは男子禁制で、もっぱら補整下着(ファンデーション)の体型補整機能を解説することに力点を置いていた。ところが鴨居が開催した「チュニカ・ミュージカルショウ」は、観覧席に男性も招かれていたし、写真を見る限り、出演者のモデルが上半身に下着をつけていないか、あるいは透ける生地によって、事実上トップレスの姿で登場している。それは、これまで日陰に隠れていた下着に光を当てるとともに、女性の肉体そのものの魅力を存分に輝かせようとするかのようだ。そして鴨居は「下着ブームは下着知識の普及がひきおこしたものではなく、またモードのような人為的に作られたものでもなく、生活の醗酵として生まれたものです」と結論づけている。表面的で一時的な流行ではなく、女性の生活そのものから醸し出される、本質的な変化だということであろうか。鴨居の本の冒頭には、次のような文章がある。「女の下着は、時には肉体の機能や生理を犠牲にしてまでも“女らしさ”を追求してきました。しかもその女らしさは、男天下の、男のオモチヤとしての女らしさでありました」「新しい下着は“秘められるべき衣服”から。恥しくない”衣服に移りつつあります」「女体の下半身は男の性にのみ奉仕し主体的な機能はギセイになり衣服の合理性が失われます。しかし今日の女らしさは男の社会的な力に挑む活動的な魅惑ですから……(同)」こうした点から見ると、鴨居は決して下着のアピール効果を否定していない。しかし、あくまで、それは、男性の期待に合わせるためではなく、女性としての魅力を堂々と主張する活動であったように思われる。
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