前貸しした債権と賃金とを相殺する際、双方が合意していたとしても、民法によれば賃金の四分の一、例外として二分の一に限って相殺が認められているのであって、無制限に相殺することができるものではありません。もちろん、その範囲内の相殺であったにせよ、労働を条件にするのであればいかなる場合でも許されないのです。そこで、従業員が住宅建設資金の融資を会社から受ける場合についてみると、住宅融資は通常高額なだけにいくつかのチェックポイントがあります。それは、(1)従業員からの申し出によること、(2)貸し付けの返済額も一回の賃金または賞与、退職金から充当する場合に生活に重大な影響を与えない程度であること、(3)たとえ返済前であっても退職の自由を束縛されないこと、などがあげられます。つまり、前借金相殺に際して「貸し付けの原因、その期間、返済の金額、金利」などを判断したうえで「労働することが条件になっていないこと」が、違法性を決める外準になってくるでしょう。