人間形成で大事なこと

2011.06.27

マスメディアから世界各国の歌や芸能、文化がひっきりなしに流れているというのが現代である。多様な人々がともに生きる社会での人間形成で大事なのは、個々人の属性である差異を「自然なもの」として捉え、差異に対して偏見をもったり固定観念をもったりしないことである。その問題に真正面から取り組んでいるのが、アメリカ合衆国(以下、アメリカ)のダーマン・スパークスらが提唱するアンチバイアス教育である。アンチバイアス教育は、偏見にとらわれない人間を育成するために、人間の発達過程で保育士や教育者がどのような関わりをもてばよいのか、どのような環境構成を心掛ければよいのかについて考える教育である。そこでは乳幼児期が重要であるとして、とくに2歳から9歳までの時期に着目する。また、文化だけではなく、ジェンダーや障がいに対する差別など、差別や偏見全般を問題として取り扱う。アンチバイアス教育では、異なるものを尊重し、受容し、共感的理解ができること、話し合うこと、クリティカルな思考(適切な基準や根拠にもとづく、論理的で偏りのない思考)をすること、そして、社会のなかに不公正がある場合には、それを是正する行動を起こすことが期待されている。アンチバイアス教育は、多民族国家アメリカで誕生し、その内容は、1989年に発行された『Anti―biascurriculumToolsforempoweringyoungchildren』に示されている。1994年には玉置哲淳らによって翻訳され、『ななめから見ない保育−アメリカの人権カリキュラム』として日本にも紹介された。日本では、関西地方にある「みなみ保育園」(仮名)がアンチバイアス教育を取り入れた保育を実践しているが、韓国やオーストラリアにもアンチバイアス教育を実践している保育園がある。私を含む本書の執私たちは、2002年に台湾、韓国、中国でフィールドワークを実施したが、そこで気づいたことは、肌、目、髪の毛の色などに代表される可視的相違点をもつ人々で構成されるアメリカと、不可視的相違点をもつ人々への差別が存在するアジアとでは、アンチバイアス教育の「偏見から自由な子どもを育てる」という基本理念は共通するものの、配慮すべき点などに違いがあるのではないかということである。

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